フィナステリドとデュタステリドは、現在知られている5α-レダクターゼ阻害剤の中で最もよく知られ、そして使われている成分です。
どちらの薬も、5αリダクターゼを阻害することによって、AGA【男性型脱毛症】を引き起こす原因であるDHTの発生を抑制します。
フィナステリドとAGAの原因について、詳しくは以下の記事を読んでください!
フィナステリドとデュタステリドは現在ではAGA治療としての利用が目立っていますが、本来はそれぞれ異なる目的として使われることを想定されていた医薬品の成分です。
今回の記事では、フィナステリドとデュタステリドをAGA治療のための成分として比較し、2つの成分の主な違いを見ていきます。
フィナステリドとデュタステリドの歴史
フィナステリドとデュタステリドの歴史を振り返ってみると、実はフィナステリドの方が早く世間に広まっています。
◾️フィナステリドの成分は1970年代に開発され、1980年代に特許が取得されて、1992年に前立腺肥大の治療薬としてFDAの承認を受けました。
しかし、そこからなぜか薄毛の防止、発毛に効果があると言うことがわかり、研究が進められたところ1997年にAGA(男性型脱毛症)治療に使われる成分としてFDAに承認されました。
◾️一方、デュタステリドは1996年に特許を取得し、2001年に前立腺肥大の治療薬としてFDAの承認を受けました。
そして、デュタステリドも同様に薄毛の防止、発毛に効果があることが判明しました。しかも、フィナステリドよりも効果が高いと言うのです。ただ、現在においてもデュタステリドがAGA(男性型脱毛症)の治療薬としてはFDAの承認を受けていません。

両方とももともとは前立腺肥大のための成分だったんですね
FDAとはアメリカの食品・医薬品を管理する政府組織です。詳しくは以下の記事をお読みください!
デュタステリドの方がDHTの抑制効果が高い
DHTとは、薄毛の原因とな強力な男性ホルモンのことで、5αリダクターゼによって発生します。AGA治療において、DHTを抑制するには、5αリダクターゼの働きを阻害することが大切なのです。
これまでの研究では、AGAの原因である5αリダクターゼの阻害に関して、デュタステリドはフィナステリドよりも効果的であることが判明しています。
というのも、5αリダクターゼにはI型5αリダクターゼとII型5αリダクターゼの2種類があるのです。
AGAのほとんどはII型5αリダクターゼが関係しています。薄毛の多くが生え際と頭頂部の薄毛から始まることからわかるように、II型5αリダクターゼは生え際と頭頂部に多く存在しているのです。フィナステリドはこのII型5αリダクターゼにのみ作用し、薄毛の進行を防いでくれます。
しかし、現在ではI型5αリダクターゼも薄毛に関係していることがわかりました。デュタステリドの場合、このI型・II型5αリダクターゼの両方を阻害して薄毛の進行を防いでくれます。I型5αリダクターゼも抑制できるようになったことで、より広い範囲に薄毛回復の効果がある訳です。
デュタステリドのDHT抑制効果の証明
399人の患者を対象とした研究では、【5mgのフィナステリドを毎日与えたグループ】と【5mgのデュタステリドを毎日与えたグループ】に分けて効果を調査しました。
分析のために5αリダクターゼによって生み出される、体内のDHTを計測したのですが…
◾️【フィナステリド】70.8%(誤差18.3%)のDHTを抑制していた
◾️【デュタステリド】98.4%(誤差1.2%)のDHTを抑制していた
という結果になりました。ちなみにこの研究は、AGA治療のためではなく、前立腺肥大に苦しむ人々を対象に実施されました。
つまり、AGA治療として通常処方される用量(1mg)よりも高い用量(5mg)のデュタステリドおよびフィナステリドを使用しています。それでも、デュタステリドはフィナステリドよりもDHTを低下させる効果が高いことが判明しました。

でも、この結果でもっと注目すべき凄い点は別にあります…!
フィナステリドとデュタステリドの誤差の範囲を見てみてください。デュタステリドの方が、フィナステリドよりもかなり誤差が小さいです。つまり、デュタステリドはフィナステリドよりもDHTの遮断においてより一貫して強力な作用があるということです。
デュタステリドの誤差範囲は1.2%であり、これはつまり効果の強弱なく、5αリダクターゼをほとんど完全に阻害し、体内のDHTをほぼ完全に排除していることが分かります。
対して、フィナステリドの誤差範囲は18.3%で、人によって効果があまりない人や、かなりある人がいて大きなムラがあることを示しています。

用量が多いとはいえ、デュタステリドの効果めっちゃ高いじゃん…
デュタステリドの発毛効果
フィナステリドとデュタステリドは薄毛の原因を抑制する作用はありますが、発毛させる作用はありません。しかし、薄毛の原因がなくなった後、髪の毛が健康な元の状態に戻ろうとするために結果的に発毛することが分かっています。
そしてデュタステリドがI型・II型5αリダクターゼを阻害し、フィナステリドよりも高いDHT抑制効果を持っているために、様々な研究ではデュタステリドの方がフィナステリドよりも発毛効果が高い可能性があると言われています。
2006年の研究
21〜45歳の416人の男性を対象とした2006年の研究では、2グループに分かれ、片方にはフィナステリドを、もう片方にはデュタステリドを毎日与えられて12〜24週間様子を観察されました。
効果を比較&検証するために、治療前後の写真を比較しました。その結果、デュタステリドがフィナステリドよりも毛量の増加に貢献していることが判明しました。
2017年の研究
18〜40歳の90人を対象とした2017年の研究では、2グループに分かれ、片方にはフィナステリド1.0mgを、もう片方にはデュタステリド0.5mgを毎日与えられて24週間様子を観察されました。
デュタステリドのグループ | ・治療前の1㎠あたりの毛量【223本】 ・治療後の1㎠あたりの毛量【246本】 |
フィナステリドのグループ | ・治療前の1㎠あたりの毛量【227本】 ・治療後の1㎠あたりの毛量【231本】 |
この結果から、デュタステリドの方がDHTを抑制する効果が高く、AGAにより弱っていた毛包をより多く救うことでフィナステリドよりも多くの発毛に導くことがわかりました。
デュタステリドがフィナステリドよりも発毛に効果的と言われる理由は大きく2つあります。
◾️【理由1】5αリダクターゼをフィナステリドより効果的に阻害し、AGAの原因であるDHTをほぼ完全に抑制することで、DHTにより苦しめられていた毛包をたくさん救うことができるため。
◾️【理由2】デュタステリドの半減期が長いため。つまり、医薬品を服用後にフィナステリドよりも長く体内に留まり効果を発揮することができる。(デュタステリドの半減期は70歳未満の男性で4〜5週間、フィナステリドの半減期は18〜60歳の男性で約5〜6時間)
ただ、この結果は決してフィナステリドがAGA予防に効果的でないということを言っているわけではありません。ブログでも散々紹介しているように、フィナステリドにもしっかりとAGA治療として高い効果はあります。

私も自分のAGA治療にはフィナステリドを使用しています!
フィナステリドとデュタステリドの副作用の比較
フィナステリドとデュタステリドは両方とも副作用が確認されています。主に性機能に関することが多いですが、副作用の発生確率は両者ともほとんど変わらず、更にはその確率も非常に低いものだと言うことが判明しています。
フィナステリドに関しては、副作用についてかなり詳しくまとめましたので、以下の記事を読んできただければ幸いです。
フィナステリドに関する研究は、全体としてだいたい同じことを言っています。
◾️フィナステリドはAGA治療の成分としては安全
◾️副作用は滅多に起こらない
◾️副作用が起きた場合、フィナステリドを止めれば副作用はなくなる
◾️副作用は時間が経てばなくなる
同様に、デュタステリドも一般的に安全で、副作用も滅多になく、さらに副作用が起きた場合にはデュタステリドの服用を止めれば副作用はなくなることが分かっています。
2017年の研究
先程紹介した2017年の研究では、デュタステリドとフィナステリドの間に大きな差はないとしています。
デュタステリドのグループ | 【45人中】勃起不全になったのは3人、性欲減退を感じたのは4人 |
フィナステリドのグループ | 【45人中】勃起不全になったのは1人、性欲減退を感じたのは3人 |
デュタステリドの方が若干副作用を経験した人数が多いのですが、「統計学的には両方のグループに差はない」と言ってもいい結果です。
2019年の研究【総説論文】
2019年に公表されたこちらの研究は、既存のフィナステリドvsデュタステリドの研究論文をまとめた研究です。1995年から2018年までのフィナステリドvsデュタステリドに関する研究を全て厳選し、質の高い論文を選んでいます。

かなり良い論文なので、信憑性はめっちゃ高いです!
合計576名分の研究結果から、デュタステリドの方がフィナステリドよりも薄毛改善に効果があることが判明したのですが、注目するべきは副作用です。
副作用を感じた人 | デュタステリド | フィナステリド | 統計学的な差 |
性欲減退 | 290人中26人 | 286人中22人 | 差はなし(p=0.54) |
勃起不全 | 219人中13人 | 216人中11人 | 差はなし(p=0.07) |
射精障害 | 255人中7人 | 249人中9人 | 差はなし(p=0.58) |
論文の結果からは、性機能に関する副作用において、デュタステリドとフィナステリドに差はないということがわかりました。

デュタステリドの方がAGA治療の効果が高いから、副作用も大きいのかと思っていましたが、違ったみたいです!
かなり簡略化して表にしたので、不明点は論文を読んで確認してください!
フィナステリドとデュタステリドの副作用は発生する確率は低いですが、発生する可能性があるということに注意することが重要です。副作用が発生した場合は、必ず医師に相談しましょう。
【フィナステリドvsデュタステリド】どっちが良いのか
フィナステリドとデュタステリドは、AGA治療のにおいて同様の効果を持つ2つの異なる薬剤です。どちらも5αリダクターゼを阻害し、男性ホルモンであるテストステロンのDHTへの変換を防ぐことでAGAを防ぐと考えられています。
両方ともしっかりと効果があり、副作用も同じ確率であります。ただ、ほとんどの副作用は患者にとって許容できる範囲内です。
デュタステリドはフィナステリドとは違い、まだFDAに認定されてはいませんが、デュタステリドはこれから研究がさらに進み、近い将来にFDAに認められるとされています。

フィナステリド、ミノキシジルに並ぶ3つ目のAGA治療成分としてFDAに認定されるわけですね!
多くの研究ではフィナステリドよりも効果が高いということが証明されているデュタステリドですが、だからといってデュタステリドの方が絶対にフィナステリドよりも優れているわけではありません。
医薬品は向き不向きがあるため、使用しながら自分に合った治療を選択する必要があります。
なるべく医師と相談して、自分に合った医薬品を相談して決定するようにしてください!
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